梅毒患者さんが増えていることをご存知ですか?
梅毒は過去の病気ではありません。5年間で患者報告数が約5倍に!女性では約13倍に急増しています!
梅毒とは、性感染症の一つで、過去には大流行を引き起こし恐れられた病気です。
治療が可能になったことで、報告数は減っていましたが、 現在大阪府では、若い世代を中心に、梅毒の患者数が増加し続けています。
梅毒は性行為によって感染します。これまでは、男性の患者数がほとんどであったことから、男性間の性行為による感染が中心と考えられてきましたが、女性の患者報告数が増加したことから分かるように、異性間の性行為でも感染が拡大しています。
梅毒を「過去の病気」と思わず、正しい知識を持ち、予防や早期発見のために行動をしましょう!
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が原因です。感染がおきた部位に存在する梅毒トレポネーマが、皮膚や粘膜の傷口から入り感染することがあります。
感染してから症状が出るまでの期間は約3週間です。症状は、時期によって異なります。
- 第一期(感染して約3週間):
- 感染がおきた部位(陰部、くちびる、口の中、肛門など)に赤いしこり、潰瘍(かいよう)
- 第二期(感染して約3か月):
- 発熱、頭痛、うっすらと赤い発疹、脱毛など
- 第三期・四期(感染して3年以降):
- 皮膚にゴムのような腫瘍、血管や心臓、脳などに障がい、場合によっては死亡
症状がある場合は医療機関(男性:泌尿器科、性感染症内科(性病科) 女性:婦人科、性感染症内科(性病科))を受診しましょう。
梅毒に感染していても症状がないことがあり、症状がなくてもパートナーに感染させる可能性があります。
また、梅毒に感染しているとHIVなどの他の性感染症にかかりやすくなります。
さらに、妊娠中の女性が感染するとお腹の赤ちゃんに症状や障がいが出ることがあります。
梅毒に感染しているかどうかは血液検査を受けることで知ることができます。治療は、抗生物質を服用し、しっかりと完治できます。
梅毒に感染していた場合は、パートナーも感染している可能性があるので、検査を受けることをおすすめします。
梅毒の予防について
梅毒の予防には性行為の際にコンドームを使用することが有効ですが、症状のある部位によってはコンドームで覆うことができないため、完全に予防できないこともあります。
感染の心配があるときは、検査を受けて、感染しているかどうかを知ることが大切です。感染している場合は、早く治療することにより症状の悪化を防ぎ、またパートナーへの感染を防ぐことができます。
ここで、医師にとってもむつかしい(一般の患者さんにはもっとわかりにくい)
「梅毒の診断方法」を解説します。
性感染症診断・治療ガイドラインによると、梅毒の検査には2つの方法が記載されています。
- 1) 皮膚や粘膜などの病変部位からの浸出液を採取してPCRなどの核酸増幅法で病原体を検出する
- 2) 採血検査にて行える、梅毒抗体検査(RPR, TP)
梅毒は、The great imitator(グレート・イミテーター:偽装の達人)という異名があるほど、さまざまな症状が出るため、他疾患特にヘルペスと間違われることもしばしばあり、初診時では「梅毒かな?」と疑って診察しなければ、診断はかなり難しいです。
梅毒を診断したことがない医師も多いため、専門医を受診することをお勧めいたします。
ちなみに、上記の 1)梅毒のPCR検査に関しては、保険適用ではなく、ガイドラインには「梅毒トレポネーマPCRは、検体採取に習熟していないと検出感度が良くないことが知られている。PCR陰性でも梅毒を否定できない。」と記載されています。実際の臨床現場は行われることは、ほとんどありません。
一般的には、採血検査にて行うことができる、TP(梅毒トレポネーマ抗体)とRPRという二つの抗体検査の結果を見て判断します。しかし、この判断がなかなか複雑なのです。
梅毒抗体検査の意味と解釈
梅毒の抗体検査にはTPとRPRの2つがあることを説明しましたが、簡単に解説すると、それぞれは以下のような意味があります。
- TP:過去に、梅毒にかかったことがあるかどうか?
- RPR:梅毒の現在の活動性
つまり、梅毒に一度感染して、きちんと治療を受けると、TPは陽性のままですが、RPRは陰性となります。
しかし、例外のパターンがいくつかあります。
そもそも、「抗体の値」とは、梅毒と体が起こした反応・産生した蛋白質を後から血液検査で確認しているものであり、あくまで梅毒の影・感染したことにより体が作った抗体・タンパク質を追いかけているのです。抗体の値は、梅毒自身を直接検査しているわけではないのです。人それぞれで、高く出たり、遅くしか出てこなかったりばらつくのです。
その値をどのように総合的に解釈するのか、ということが非常に重要であると考えます。
私自身としては、梅毒の診断において最も重要なのは、患者自身の背景・性病に感染する危険と、現在の症状であると考えます。抗体検査は、あくまでも梅毒の感染を証拠付ける一つの参考でしかありません。患者全体の状況を見て、感染したかどうか、治療できたかどうかを判断する必要があるのです。
まとめると、梅毒に対する対応は
- 1) 梅毒に感染する危険な性的接触があったのか
- 2) 症状はどうか、あるのかないのか
- 3) 梅毒として治療薬をきっちりと服薬したか
- 4) 血液の抗体価がどの様であるのか、以前はどうであったのか
の順に梅毒への対応の大切なことですので、血液検査のみで右往左往、あわてないようにしましょう。